2022年12月5日、軍需産業に関する新たなデータをストックホルム国際平和研究所が発表しました。
世界の軍事関連企業大手100社による武器および軍事サービスの2021年売上高は、前年比1.9%増の約80兆円に達したとの事です。
売上高の伸び率が最も大きかった地域は中東で、上位100社に含まれる中東企業5社の売上高は前年から6.5%増加したと指摘しています。
一方、米国に本社を置く企業の売上高は0.9%減少しました。
それにもかかわらず、米国の軍事関連企業は引き続き業界を支配しており、100社中40社が米国企業で、売上高は約40兆円でした。
ストックホルム国際平和研究所とは
スウェーデン王国を本拠地とする国際平和研究機関で、『Stockholm International Peace Research Institute』略称はSIPRI。
紛争、武器、軍備管理、軍縮などの研究を専門とし、国際平和分野で世界で5番目に大きな影響力を持つシンクタンク(研究機関)とされています。
ストックホルム県ソルナ市を拠点とし、記述内容の客観性、正確性から国際的にも評価が高い『軍備・軍縮年鑑』の刊行でも知られています。
SIPRIの発表した報告書によれば、上位100社の総売上高のほぼ3分の1は上位5社によるもので、すべて米国の企業です。
第1位 ロッキード・マーティン(米国)
アメリカ合衆国の航空機・宇宙船の開発製造会社。
航空、宇宙産業分野で世界一の軍事企業となり、米軍の主力戦闘機、輸送機といった軍用機にミサイルや軍事衛星の開発製造を行っています。
現在で世界の最新鋭ステルス戦闘機であるF-22やF-35の開発・製造を行っている事や、極秘先進技術設計チーム「スカンクワークス」が多数の傑作軍用機を生み出したことでも有名です。
日本語では『ロッキード・マーチン』と表記される事も。
第2位 レイセオン・テクノロジーズ(米国)
アメリカ合衆国マサチューセッツ州ウォルサムに本部を置き、防衛・航空宇宙事業を展開する多国籍企業。
主な事業内容は、航空機エンジン、アビオニクス、機体、サイバーセキュリティ、ミサイル、防空システム、そして無人航空機となっています。
航空宇宙・防衛産業を代表する巨大軍需企業であり、その収入の多くはアメリカ合衆国政府の軍事予算から請け負っていて、売上高・時価総額ともに軍需産業でトップクラスです。
第3位 ボーイング(米国)
アメリカ合衆国のイリノイ州シカゴに本社を置く世界最大の航空宇宙機器開発製造会社。
現在アメリカで唯一の大型旅客機メーカーであり、ヨーロッパのエアバス社と世界市場を二分する巨大企業です。
旅客機だけではなく軍用機に軍用ヘリ、ミサイルなども開発製造しています。
代表的な兵器は米海軍戦闘機のF/A-18E/F スーパーホーネットや戦闘ヘリのアパッチや輸送ヘリのチヌークなどがあります。
第4位 ノースロップ・グラマン(米国)
アメリカ合衆国のバージニア州フェアファックス郡ウェストフォールズチャーチに本社を置く企業。
主に戦闘機・軍用輸送機・人工衛星・ミサイル・軍艦などを製造している軍需メーカーであり、軍艦メーカーとしては最大です。
無人航空機のRQ-4グローバルホークや、近年では長距離戦略爆撃機のB-21を開発した事で有名でもあります。
第5位 ジェネラル・ダイナミクス(米国)
アメリカ合衆国のバージニア州フォールズチャーチに本社を置く重機械巨大企業。
軍用向けに戦車や装甲車、戦術通信システムなど様々な物を扱っており、代表的なところでは米陸軍の主力戦車M1エイブラムス、戦闘機のF-16、ズムウォルト級ミサイル駆逐艦などがあります。
それらに搭載する重火器なども合わせて開発製造している模様です。
以上5社の売上高は合計で約26兆円でした。
軍事ビジネスに直接かかわる事は少ないかもしれません。
ですが国際情勢・安全保障・軍事・防衛に関する報道の裏側にこうした企業が存在している事を知っておけば、世界の動きを理解する助けになるかもしれませんね。