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現代では大国間の全面戦争というケースはほとんどありませんが、太平洋戦争以前は日本を含めて各国とも大規模な戦争をかなりの頻度で繰り返していました。
日本は明治維新以後、日清戦争、日露戦争、太平洋戦争という3つの大きな戦争を行っています。
中でも太平洋戦争は日本の経済力を無視した戦争であり、そもそも遂行不可能なものでした。
今回は、これら3つの戦争でどのくらいの経費がかかったのか、紹介していきましょう。

 

日清戦争

 明治維新後の日本にとって最初の大規模な戦争となった日清戦争の戦費は、当時の金額で約23000万円です。
当時と今とでは物価水準が大幅に異なっていますから、金額を直接比較する事は出来ません。
戦争にかかったコストを適切に比較するには、GDP(国内総生産)との対比が有効です。

日清戦争開戦当時のGDP134000万円でしたので、戦費総額のGDP比は0.17倍でした。
現在の日本のGDPは約500兆円です。

置き換えると85兆円という金額に。
現在の国家予算は約100兆円ですから、国家予算に匹敵する金額を1つの戦争に投じた計算となります。

 

日露戦争

 日本にとって初めての近代戦となった日露戦争の戦費は約183000万円でした。
当時のGDPは約30億円でしたので、戦費総額のGDP比は0.6倍という事になります。

現在の金額に当てはめると300兆円という事になりますから、国家予算の3年分です。

日清戦争とは異なり、最新鋭の艦船やハイテク兵器が多数投入されたため、戦争遂行期間がほとんど同じにもかかわらず、日清戦争の8倍もの戦費を必要としたわけです。

 

太平洋戦争

日中戦争を含む太平洋戦争の名目上の戦費総額は約7600億円です。
日中戦争開戦時のGDP228億円なので、戦費総額のGDP比率を計算すると33倍。
国家予算に対する比率では280倍という数字となります。

通常の手段でこの戦費を調達する事は出来ず、戦費のほとんどは日銀の直接引き受けによる国債発行で賄われました。
当然の事ながらインフレが発生します。
戦時中から、すでに物価水準はどんどん上がっていきました。

更に旧日本軍は占領地域に国策金融機関を設立し、現地通貨や一種の約束手形などを乱発して無謀な戦費調達を行いました。

これらの戦費を実質ベースで計算し直せば、経費はもっと少ない数字になる可能性が高いでしょう。

日中戦争以降の国内インフレ率、占領地のインフレ率を国内の1.5倍と仮定すると、おおよそ2000億円となります。
当時の日本は国家総動員体制で経済活動が統制されており、物価の正確な水準を把握するための十分な統計データが揃っていません。
ですが、おおよその戦費という意味では、2000億円程度と考えて間違いないでしょう。

 

戦費総額を2000億円と仮定しますと、GDPとの比率は約8.8倍に、国家予算の比率は74倍となります。

現在の価値に置き換えると、4400兆円もの費用を投入した事になるでしょう。

これらの戦費負担について、最終的には預金封鎖によって国民から財産を強制徴収する形で埋め合わせが行われました。
税率が高い人では資産の9割が徴収されており、富裕層の多くはこれによって財産のほとんどを失う事になったと言われており、日本の経済は大きく傾いたのです。

 

本記事では主に戦費について触れましたが、戦争で失うのはお金だけではなく、もっと大切なものが奪われてゆきます。
世の中のある戦争が1日も早くなくなることを願わずにはいられません。

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