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1941~1945年の終戦まで続いた太平洋戦争における、最も甚大で悲劇的な被害を出した"サイパン島の戦い"を描いた映画がある。
それが2011年に平山秀幸監督が手がけた「太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-」だ。

Image Credit : https://amazon.co.jp

 

1944年、太平洋戦争末期、玉砕の島サイパンに、アメリカ軍から“フォックス”と呼ばれ、恐れられたひとりの日本人がいた。大場栄大尉。彼は、47人の仲間の兵士たちと共に、16カ月の間、敵に立ち向かい、多くの民間人を守り抜いた。彼の誇り高き魂が、味方の日本人だけでなく敵側のアメリカ人の心も大きく動かしていった―。これは絶望的な状況の中、最後まで諦めずに生き抜いた名もなき兵士とその仲間たちの実話に基づく真実の物語である。

原作となったのは、アメリカ人の作家ドン・ジョーンズが書いた小説である。

※ジョーンズも元は軍人で、太平洋戦争の時には海兵連隊の伍長としてサイパンの戦いに参加している。

この小説は珍しい経緯を辿っていて、まず1982年に中村定の翻訳によって『タッポーチョ「敵ながら天晴」大場隊の勇戦512日』という題名で祥伝社から出版している。
またこの時期、ジョーンズはハリウッドでの映画化を打診したが、日本語のみでの出版物であることと、日本軍の活躍がめざましく描かれているので映画化は成されなかった。

その後、1986年に「Oba, the Last Samurai: Saipan 1944-45」として米国でも出版し、日米共同での映画化を進めることとなる。
映画化に際して加筆修正を行ない、祥伝社から文庫化もされた。
この時のタイトルは『タッポーチョ 太平洋の奇跡「敵ながら天晴」玉砕の島サイパンで本当にあった感動の物語』と変わっている。

著者のドン・ジョーンズ氏が突然「大場大尉」と言って、私に電話をかけてきたのは、昭和44年だった。当時、彼は新潟のアメリカ文化センターの所長をしていた。すでに大場大尉と呼ばれることがなくなって久しかった私にとっては、その呼びかけは異様であり、不気味でさえあった。《中略》私は、ドン・ジョーンズ氏が気持ちのいい男であることもわかり、かって殺し合った仲だというのに、私たちの間には奇妙な友情が生まれた。
大場栄大尉「刊行に寄せて」より引用

ジョーンズは、かつてサイパン島で敵対した大場栄(おおばさかえ)大尉と再会し、双方の知っていた情報を交換する形で製作された。
映画は2011年に公開。
興行収入は15億円を超えるヒット作となった。

映画のシナリオは、アメリカ軍が艦砲射撃と空襲でサイパン島の日本軍基地を攻撃するところから始まり、ひと月ほどで制圧された後、大場大尉たちの投降までを描いている。

竹野内豊が演じるフォックスこと大場大尉は、サイパン島制圧とともに戦死したものとされるも、実は生き残っていた。
たった47名だけ残った部隊を率いてゲリラ戦を展開し、1945年の11月(終戦は8月15日)に知る。
軍歌(部隊歌「歩兵の本領」)を歌いながら投降するラストシーンは圧巻である。

また原作の小説を映画化する際、日本軍の勇姿を脚色していたジョーンズと、史実に基づきたい大場とで意見の相違があったという。
大場によると「映画や小説でみるような勇姿はサイパン島にはなかった。一方的な戦いであった」という。
戦争中にはどの国よりも恐ろしいと言わしめた大日本帝国の兵士が、戦後には自らを勇敢でも強くもないと話し、結果的には勝利を収めたアメリカの兵士が日本人を謙虚に称える様は、どこか皮肉で滑稽でもあったが、彼らはこうして友となったのである。

「太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-」スタッフ・キャスト

監督:平山秀幸
原作:ドン・ジョーンズ
音楽:加古隆
US監督:チェリン・グラック

大場栄大尉:竹野内豊
堀内今朝松一等兵:唐沢寿明
青野千恵子:井上真央
木谷敏男曹長:山田孝之
奥野春子:中嶋朋子
尾藤三郎軍曹:岡田義徳
金原少尉:板尾創路
永田少将:光石研
池上上等兵:柄本時生
伴野少尉:近藤芳正
馬場明夫:酒井敏也
大城一雄:ベンガル
元木末吉:阿部サダヲ
ハーマン・ルイス大尉:ショーン・マクゴーウァン
ポラード大佐:ダニエル・ボールドウィン
ウェシンガー大佐:トリート・ウィリアムズ


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